スマホと十日(千原こはぎ)


スマホと十日


おそらくは陽性ですと告げられて十日の監禁生活開始

「九時 八度四分」「十二時 解熱剤」わたしをメモ帳アプリに写す

厚労省からのメールに日に一度答えるここで生きていますよ

YouTubeぼんやり見れば夏だったみんな元気で何よりだった

手のひらのタイムマシンことTVerで録画もしてない過去を観漁る

「こんなときだからかやけに」を言い訳に楽天カートを肥らせてゆく

唯一の外とつながるための窓タイムラインに見る夏の雲

スマホのない世界ならどれほど長い十日だろうか、また咳が出る



 こんにちは。いつのまにかお盆も過ぎ、信じられないうちに夏が終わっていきますね。さて、水たまりとシトロン、今回のお題は「スマホで8首+それにまつわる散文」です。


 8月の頭に、なんだか少し喉がイガイガするなぁと思っていたところ、新型コロナウィルスに感染してしまっておりました。熱は39度まで出て、下がってからも気管支がゼイゼイするし咳が出るしでなかなかに厄介です。

 結局、まるまる11日間、家に閉じこもりきりになっていたのですが、行政との連絡、病状メモ、暇つぶし、買い物、精神安定、その他諸々と、何もかもすべてをスマホに頼り切る生活でした。


 わたしが初めてスマホを持ったのはiPhone 3GSの頃だったので、おそらく2009年。まだスマートフォンというものがあまり普及しておらず、周りはほとんどガラケーでした。今見ると信じられないくらい画面が小さいし画素が荒いけれど、その頃はこんなに大きな画面!こんなに画質がきれい!といちいち感動していたものでした。

 そこから13年、いまやスマホはさらに大きく高画質・高機能になり、さらに深く仕事や趣味や生活とつながっていて、失くすと大変。すべての活動が立ち行かなくなるほどの依存っぷりです。

 今回、11日間も完全に部屋に閉じこもる生活をして、もしこれがスマホがない頃だったら、精神的にも体調的にもきっと耐えられなかっただろうなとしみじみと思いました。


 これからもこういったガジェットはどんどん進化して、いつかまたガラケー→スマホ、のときのような大きな変化がやってくるのでしょう。そういった流れにも柔軟に対応できる頭のやわらかさを持ち続けていたいものです、切実に。


水たまりとシトロン

御糸さち、西村曜、千原こはぎによる短歌な公開交換日記

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