イマジナリー亀(西村曜)

 たいへんにご無沙汰しております。水たまりとシトロン、何巡目なのかはもう数えていませんが、お題はざっくり「動物」です。

 「動物」というと、わたしはじつは動物ぜんぱんが苦手です。犬も猫もうさぎも鳥も飼ったことがなく、触る機会があったとしてもどう接していいかわからず、そういえば小学生のころ飼育当番でうさぎ小屋や鶏小屋のそうじをするの、憂鬱だったなあ……としみじみ思い出しました。苦手な理由は、たんじゅんに馴染みがなく、不慣れなだけだとおもうのです。犬も猫もうさぎも鳥も、眺めるぶんにはすきです。

 そんなわたしが飼ったことのある数少ない生き物に、亀が挙げられます。母が河原で捕獲した亀で「カメキチ」と名付けられ、しばらくうちで飼われていました。その後カメキチはかなしい最期を迎え、死後メスであることが判明するのですが、まあその話は割愛しましょう。

 亀というのは、けっこうかわいいものでした。あんがいかわいらしい顔をしているし、あんがい長く首を伸ばして亀フードを食べるし(この亀フードがほのかな異臭のするものだったことも思い出ぶかいです)、あんがい歩くのがはやい……。もういちど飼うなら亀がいいなあ、でもいまのうちはペット禁止だからなあ、とぼんやり考えて、そのぼんやりが積み重なるうち、こころに生まれたものがイマジナリー亀です。

 イマジナリー亀とは、イマジナリーフレンドの亀バージョンといえばいいのでしょうか、つまりはわたしのこころのなかに住まうわたしの飼い亀です。名前は「ざくろ」。ハムを好む、という設定付きです。亀がハムを食べるというのは何かのエッセイで読んで、かつて飼っていたリアル亀のカメキチにハムを食べさせたかった……という悔恨が、イマジナリー亀にハムを与える妄想へと発展したのだとおもわれます。そうやってイマジナリー亀にハムを餌付けしたり(こころの中の)外で遊ばせたりしているうちに、わたしはイマジナリー亀をどうにかして具現化したくなってしまいました。

 ヘッダーにあげた画像は、その具現化したイマジナリー亀のざくろです。ご覧のとおり、ぬいぐるみです。しかもブルーナ作画バージョン。わたしの誕生日に夫がくれました。厳密にいえば、誕生日プレゼントの名目でわたしが通販にて買い、夫がその支払いをしてくれました。しょうしょう味気ないかんじですが、何はともあれ、わたしはざくろに触れることができたのです。具現化したイマジナリー亀のざくろはあんがいかたく、たまにまふまふと甲羅を押してたのしんでいます。いまは、ざくろに与えるイマジナリーハムを具現化したい、という狂気じみた欲望が芽生えています。ロースハムのぬいぐるみがあれば、よろこんで買います。

イマジナリー亀にざくろと名を付けて、ざくろはハムを好む設定

水たまりとシトロン

御糸さち、西村曜、千原こはぎによる短歌な公開交換日記

0コメント

  • 1000 / 1000