蜂センサー(西村曜)

 こちらではご無沙汰しております。西村曜です。
「水たまりとシトロン」13巡目のテーマは「怖いもの、苦手なもの」。困ったなあ……と書きしぶっていました。前回の千原こはぎさんの回が更新されたのが3月でしたので、3か月ちかくも「怖いもの、苦手なもの」から逃げていたのです。けれどもう6月も下旬、そろそろ腹を括って向き合わねばなりません……。

 わたしがどうしても怖いもの、それは、蜂です。理由はたんじゅん、刺すからです。蜂はこちらから手出しをしないかぎり刺してはこない、と聞いたこともありますが、わたしはそれもちょっと疑っています。だいたい蜂にとっての「手出し」とは何なのか。わたしは蜂を見かけたらとりあえずダッシュでその場から逃げるのですけれど、それも蜂から何か異様な行動をしているように見られてしまったら、やはりこちらを攻撃してきて刺されてしまうのでは……とおもうのです。

 けれど、逃げずに蜂をやり過ごすこともできません。最適解は、できる限り蜂から離れた場所から蜂の存在に気づき、そっと走って逃げることだと考えて、つねにそれを実践しています。わたしの「できる限り蜂から離れた場所から蜂の存在に気づ」く能力は、わが家では「蜂センサー」と呼ばれています。この蜂センサーによって今日まで蜂に刺されることなく生きてこられたと自負しています。

 ところが、さいきん蜂センサーがほかの虫にも反応してしまうようになったのです。ほかの虫の筆頭はとんぼです。夫に言わせれば「蜂ととんぼではぜんぜん飛び方とか違うじゃん」とのことですが、いったんばかになってしまったわたしの蜂センサーはとんぼにもがんがんに反応して、わたしは遠くを飛ぶとんぼ相手にぎゃあぎゃあ騒いでいます。

 また、おそろしいことに、これも夫いわく「ちかくに蜂がいるのに気づいてないときあるよ」ということなのです。もうわたしの蜂センサーはほぼ機能していないのかもしれません。それでもわたしは遠くを飛ぶ蜂らしきものを見ればいっしんに逃げだすのです、わたしのあんしんのために。

六月の薔薇園に飛ぶ蜂たちの一匹ずつが騒がしい嘘

水たまりとシトロン

御糸さち、西村曜、千原こはぎによる短歌な公開交換日記

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