春のアウター(千原こはぎ)


 水たまりとシトロン、9巡目のトップバッターになりました。
 今回のテーマは曜さん考案の「なんか服の話」。

 まだ少し肌寒い春先に着るのに、ちょうどいいアウターを持っていません。
 3月の終わりから4月あたりって、分厚いコートは重すぎるし、だからといって夜はまだかなり冷えるから、羽織るものなしでは心許ない季節ですよね。
 世間一般ではおそらくそういう時期のために、トレンチコートなる薄手で軽いけれど結構温かいコートが存在しているのだと思います。が、わたしはこのトレンチコートがおそろしく似合わないのです。なぜだろう。ほんと謎。ジャケット類も似合わないので、たぶん少しカチッとした形の襟付きのものが軒並み似合わないのだと思います。もちろん試着は何度も試みたけれど、いつもため息とともに試着室を出ることになるのです。

 先日、「地元応援クーポン」なるものが行政から二度にわたって配布されました。
 ありがたい。大変ありがたいのだけど、1,000円以上の買い物で1枚使えて500円引きになるというシステム。つまりは1,000円以上の買い物をしないと使えないし、1,980円では1枚しか使えないという代物です。
 しかもチェーン店では使えないので(地元応援なのでオーナーさんが地元の方のお店のみ)あまり使い所がなく、ぐいぐいと使用期限が迫ってきていました。

 そんななか、いつも行くショッピングモールをうろうろしていたら、あまり買ったことはないけどかわいくてきれいめな服が並んでいるショップに「地元応援クーポン使えます」の張り紙が!
 ちょうど使用期限最終日だったこともあり、ここで使うしかないな、と決心。
 何か買いたいものはあるかな、と見て回ることにしました。
 この時期、当然のようにトレンチコートはたくさん、それ以外にも、襟のない軽めのショート丈のアウターや、フード付きのカジュアルなアウターなど、いろいろな春物アウターが並んでいます。

(そうだ、春先のアウターを持っていないんだった。クーポンで買えたらちょうどいいじゃない!)
 めちゃくちゃ良いクーポンの使い道を得たり!と、意気揚々と見て回り、試着もして、無事、アウターを一着購入。きれいなミントブルーで、薄手でフードがついていて、カジュアルにもきれいめにも使えそうなものです。

(これで春の寒さももう大丈夫だ~!)
 と、帰宅して早速クローゼットに…………あれ?

 春先にちょうどいいアウターが……1、2、あ、これも、3、カーディガンも…4……あれ?
 5着目……?(゚д゚`)

「春先に着るのにちょうどいいアウターを持っていない」という確固たる認識のもと、どうやらわたしは数年かけてアウターをぽつりぽつりと買ってしまっていたようです。
 何着買っても強固な「持ってない」認識は書き換えられることはなく、こうしてまたもや春アウターを買ってしまったわけです。どうするんだ、そもそもそんなに出かけないのに。
 わたしのお出かけペースだと5着ぜんぶ着る前に夏になってしまうよ。

 自分の認識と現実との差異に頭がバグったような狐につままれたような気分になりつつ、似たようなアウターの横に今回買ったアウターを仕舞いました。
 いつになったら「持ってない」認識は書き換えられるのでしょう。
 トレンチコートを買えば変わるのでしょうか。
 ここに書いておけばさすがに記憶されるでしょうか。

 まだ少し肌寒い春先に着るのに、ちょうどいいアウターをわたしは5着持っています。
 来年こそはもう買わない、と心に決めて、今年の春は買ったアウターを着てたくさん出かけたいと思います。できるだけ。


薄コートのミントブルーをくぐりぬけ春をまとった色のない風

水たまりとシトロン

御糸さち、西村曜、千原こはぎによる短歌な公開交換日記

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